「所感」は正しい敬語か?(和文・英文例)

本記事では、「所感」は正しい敬語か?について解説します。

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運営者(とみちゃん)

熊本県生まれ。国立高専→国立大学院(情報工学修士)。当時は小さなベンチャー企業2社(現東証プライム市場上場 アカツキ、現JASDAQ市場上場 Speee)、時価総額数兆円規模の大手企業にてエンジニア・インターンシップを経験。Speeeの開発インターンシップ evolution (上級編) にて優勝し、Speee賞を受賞。大学院では、国内最大級のシンポジウムである「情報処理学会 DICOMO2014」にて最優秀プレゼンテーション賞・優秀論文賞を、ワークショップでは「情報処理学会 DPSWS」にて優秀ポスター賞を受賞。その後、大手企業本体の研究所でソフトウェアの研究開発職として従事し、ソフトウェアの上レイヤー~低レイヤーの幅広い開発経験を積み上げる。離婚を経験し、精神的苦痛を和らげるために横浜市から熊本市を電動アシスト付き自転車で走破(1,350km、総日数11日、内雨天時の2日は休憩日)。その後精神面が回復し、現在は子会社の役員室に所属し全社のDXを加速させる仕事に従事しつつ、複数のブログを運営中。

「所感」は正しい敬語?

「所感」とは、心に感じ思った内容や印象のことを言います。

「年頭所感」という言葉がありますが、これは企業の社長や知事、市長などが行うイメージがあるかもしれません。
ですが、新年の抱負と同じように、特にフォーマットや決まりごとはありません。

「新しい年を迎えて自分が心に感じたこと」を徒然なるままに述べたものが年頭所感です。

「所感」の語源・由来・歴史

「所感」という言葉の歴史を遡ると、語源は仏教用語に行き着きます。
仏教用語での「所感」は、「善悪の行為によって引き起こされる果報」という意味があります。

ここでの「果報」とは、ことわざの「果報は寝て待て」で使われるような、現代でいう運の良いことや幸福のことではなく、仏教用語での「前世の行いによって生じる報い」という意味を持ちます。
つまり、所感とは「過去の行為がもたらす結果」という意味合いとなります。

ここから派生して、「一業所感」という四文字熟語がありますが、人は誰でも同一の善悪の業(ごう)であれば同一の果を得ると言われています。
すなわち、人は誰でも過去に善い行いをすれば同じように報われ、悪い行いをすれば同じように相応の報復があることを意味しています。

「所感」の類語

所感と似た言葉に、所見、所懐、所存があります。
とてもよく似ていますが、それぞれどんな違いがあるのでしょうか。

まず、所見は「見た結果として導き出された判断や意見」のことです。
所感は心に感じ思ったことなので主観性が高いですが、それに比べて、所見の方は客観性が高いと言えます。

次に、所懐は「心に思っていること」のことです。
所感と同義語で、所感と同様、「所懐を述べる」という使い方をします。

最後に、所存は「心に思っていること」のことです。
所感と似ていますが、所存の方がこれから何かをしようと考えているというニュアンスが強くなります。
所感と違って、「〇〇する所存であります」というような使い方をします。

ビジネスシーンで使われる「所感」は、「心に感じ思った内容や印象」とは少し違いがあります。
「所感を述べよ」というように使われることがほとんどですが、この場合、単に感想を述べるだけではいけません。

感想とは、心で感じたり思ったりしたことを言います。

日常会話でよく使うのは感想の方だと思います。
所感と感想は似ていますが、ビジネスシーンでの「所感」は、現在取り組んでいる仕事内容を振り返り、改善点や反省点を見つけ、今後の具体的な取り組みの方向性などの意見を述べることが求められます。

毎日仕事を漠然とこなすのではなく、業務の効率化を考え、得意としている分野は伸ばし、苦手としている分野の改善意識を高めていかなければいけません。
そのためにも自分の中で所感を持っていることは、とても大切なことです。

所感と似た言葉に考察があります。

「考察を述べよ」と言われた場合は、所感のようにこれまでの仕事から今後の方向性について意見を持つだけでなく、物事を明らかにするためによく調べて考えることが必要になります。
所感よりもデータ収集や検討に時間を掛け、じっくりと考えを導き出すのが考察です。

「所感」は英語では、

  • 「impression(印象)」
  • 「opinion(意見)」
  • 「thought(考え)」
  • 「comment(見解)」

などと表現することができます。

また、「a few words(一言)」とも言えます。

「所感を述べる」と言う場合は、

  • 「express / voice my impressions of~」
  • 「give my opinion of~」
  • 「make comments / remarks on~」

と言います。

例文としては、以下のようになります。

  • I expressed my impressions of new project at the meeting today.(今日のミーティングで、新しいプロジェクトについての所感を述べました。)
  • Can you make some comments on it?(そのことについてご所感をいただけますか?)

英語では丁寧な表現や粗雑な表現というものはあっても、敬語や謙遜語はありません。

しかし、日本では古くから立場や年齢など、目上の人に対しては言葉遣いを変えて、敬意を表す文化を大切にしてきました。

ビジネスシーンでは正しく敬語を使えないと、一人前の社会人とは言い難いです。
コミュニケーションを円滑にするためにも、敬語は最低限身に付けなければいけないマナーです。

所感という言葉についても同様で、上司や取引先の方などにご意見をいただきたい時は、敬意を表す接頭語の「ご」を付けます。
「所感」ではなく丁寧語である「ご所感」としなければ、失礼に当たってしまうので気を付けましょう。

例文

「所感」という言葉を使う場合は、上司や部下、同僚によって、会話中での使い方や何のために所感を述べてもらうのかという目的が変わります。
例文で確認していきましょう。

例文(上司あて)

上司に自分の仕事の進め方についてアドバイスやご意見をいただきたい時には、丁寧語の「ご所感」という言葉を使って、以下の例文のような聞き方をすると良いでしょう。

  • 先程のプレゼンについて、〇〇部長のご所感をいただけないでしょうか?
  • 本日の業務報告は以上です。ご所感をいただければ幸いです。
  • 新しい事業計画について、ご所感をお聞かせ下さい。

上司とのコミュニケーションは、自分からは積極的に取りづらいと感じていらっしゃる方が多いかもしれません。

上司は、様々な仕事を同時並行で進行しています。そのため、上司に話し掛ける時はタイミングを見計らう必要があります。

定例の日報や報告書などで求められた時だけ上司と話すのでなく、自分からも例文のようにご所感をいただきに行くことは、とても重要なことです。
なぜなら、やる気があることのアプローチになるのはもちろん、上司の視点を取り入れて、広い視野を持ちながらビジネスプランを共有できるからです。

上司にとっても、状況の変化にいち早く気付くことができるので、軌道修正案やより細かい指示を出しやすくなります。
こまめにコミュニケーションを取っていれば、状況が変化したらきちんと報告の上で自分の意見を求めてくるだろうから任せても安心だ、と思ってもらえるような信頼関係が築けます。

また、上司の言動を通して、自分の評価がどの程度なのか、自分には何が足りないのかも気付くことができます。

積極的にコミュニケーションを取っていると、だんだんと上司の思考回路の傾向が分かるようになってきます。
そうすると、上司から指示を受けた時に、明言はされていなくても汲み取ってほしいと思われる意図にも気付くことができ、対応を先回りすることだって可能になります。

例文(部下あて)

上司にとって部下の所感を聞き出すのは、部下の成長やプロジェクトの成功を願っているからに他なりません。

部下の仕事内容の進捗状況は数字として把握できても、どのような点でつまづきを覚えているのか、自己分析がどの程度できているのかなどは、客観的に把握するのはなかなか難しいものです。
そのため、部下の所感を聞きたい時は、以下の例文のように指示すると良いでしょう。

  • 週末の報告書では、今週の所感をまとめておいて下さい。
  • この後、昨日の研修の所感を聞かせてもらえますか?

特に新入社員は、所感を求めても感想だけを述べがちです。
所感というのは、現在の状況を振り返り、今後の解決策や改善策を検討しながら具体的に意見を述べることだということを指導しましょう。

ビジネスシーンでは基本となっていますが、長々と起承転結を一から十まで話していくのではなく、簡潔に結論から述べることが大切です。
結論から述べることで、短時間で伝えたいことだけを伝えることができます。

また、所感で「顧客対応で失敗して~」というような抽象的な内容を述べる部下はとても多いです。
漠然とした内容だと、気持ちに寄り添うにも情報を聞き出すことから始めなければいけません。

「必要書類が足りず、こちらの不手際で再度時間をいただくことになった」など、所感では誰が聞いてもその状況が分かるようにしなければいけません。
簡潔でありながら、より具体的に述べる必要性を伝えていく必要があります。

簡潔かつ具体的に述べる以外にも、所感を述べる時に活用するとぐっと伝わりやすくなる、フレームアウトを提供するという方法があります。

まずは「PDCAサイクル」です。
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもので、普段から意識されている方も多いのではないでしょうか。

CheckとActionの部分を重点的に述べてもらうと、所感として聞き出したい改善策を共有しやすくなります。

他に、「PREP法」も有効活用できます。

これは、プレゼンテーションなどでよく使われるフレームアウトです。
部下がPDCAサイクルに慣れて仕事内容や自分の役目を客観視できるようになったら、それを効果的に伝える手段として活用してもらいたいものです。

PREP法は、Point(結論)、Reason(理由)、Example(例)、Point(結論)の頭文字からきています。
この順番で所感を述べると、結論と根拠が伝わりやすく、説得力を増すことができます。

例文(同僚あて)

同僚とは、同じ職場で働く人のことを指し、先輩や後輩も含みます。

同じプロジェクトを成功させるために欠かせない大切なメンバーであり、仲間であると言えるでしょう。
同僚と所感を述べ合う場合は、情報共有を目的とした場合がほとんどで、例文は以下のようなものです。

  • 先日の案件は、私は〇〇と感じて今こういうことを意識して取り組んでいるのですが、〇〇さんの所感はどんなものか教えていただけますか?
  • 所感のすり合わせができたらと思うので、この後でお時間をいただけませんか?

同僚と所感について話し合う目的は、コミュニケーションを取って情報を共有し、チームとして高め合っていくためです。

上司から同じ指示を受けていても、人によって受け取り方に差はありますし、人によって得意な分野と不得意な分野があります。

個人成果主義だと言ってしまえばそれでおしまいですが、やはり仕事にはチームワークが欠かせません。
人間は忘れやすい生き物ですが、所感について定期的に話し合う機会があれば、繰り返し改善策を共有していくことによって、業務の効率化やチーム力の向上が見込めます。

普段からコミュニケーションを取り合っていると、失敗事例も成功事例も共有することができます。
同僚が経験した事例を参考にすれば、自分にとって初めての事例であっても冷静に対処できますし、自分一人で試行錯誤するよりも成長速度を早めることができます。

しかし、同僚だからと言って、相手のペースを考えずに気安く話し掛けてはいけません。
あくまでも職場で行うことの一環なので、話し掛ける時は背筋を伸ばし、「今、話し掛けても大丈夫ですか?」と聞いてからにしましょう。

同僚と話しているという気安さから、話がプライベートな内容に脱線しやすい人もいますが、勤務時間は限られています。
時間を有効に使うように意識することが大切です。

同僚は大切な仲間ですが、ある時はライバルでもあると思います。

ライバルの視野の広さやアイディアの豊富さなどに驚きながらも、お互いの良い面を高め合っていけたら、取り組んでいるプロジェクトも成功すること間違いありません。
また、誰しも親の介護をしなければいけなかったり、子どもが体調を崩したりして、仕事を早退したり欠席しなければいけないことがあります。

日頃からコミュニケーションを取っていれば引き継ぎがスムーズですし、急な場面でも慌てずに済みます。

まとめ

ビジネスシーンにおいて所感を求められた場合、仕事内容を振り返り、改善策や解決策など今後の方向性について具体的に述べることが必要になります。

上司の所感を聞きたい時は、失礼にならないよう「ご所感」と言わなければいけません。
部下の所感を聞きたい時は、まずは簡潔かつ具体的に述べることや、PDCAサイクルやPREP法を用いて伝えやすくすることなどを折に触れて伝えながら、報告の仕方を指導しましょう。同僚で所感を聞き合うのは、情報共有のためです。

様々な事例や改善策を共有し、チーム一丸となって成長していくためには欠かせません。

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