「今後とも」は正しい敬語か?(和文・英文例)

本記事では、「今後とも」は正しい敬語か?について解説します。

目次
運営者(とみちゃん)

熊本県生まれ。国立高専→国立大学院(情報工学修士)。当時は小さなベンチャー企業2社(現東証プライム市場上場 アカツキ、現JASDAQ市場上場 Speee)、時価総額数兆円規模の大手企業にてエンジニア・インターンシップを経験。Speeeの開発インターンシップ evolution (上級編) にて優勝し、Speee賞を受賞。大学院では、国内最大級のシンポジウムである「情報処理学会 DICOMO2014」にて最優秀プレゼンテーション賞・優秀論文賞を、ワークショップでは「情報処理学会 DPSWS」にて優秀ポスター賞を受賞。その後、大手企業本体の研究所でソフトウェアの研究開発職として従事し、ソフトウェアの上レイヤー~低レイヤーの幅広い開発経験を積み上げる。離婚を経験し、精神的苦痛を和らげるために横浜市から熊本市を電動アシスト付き自転車で走破(1,350km、総日数11日、内雨天時の2日は休憩日)。その後精神面が回復し、現在は子会社の役員室に所属し全社のDXを加速させる仕事に従事しつつ、複数のブログを運営中。

「今後とも」は正しい敬語?

日本語には、相手を敬う気持ちをあらわすときに使う言葉が何種類かあり、その内の一つである丁寧語が使われるようになったのは10世紀頃の平安時代と伝えられています。

また、尊敬語や謙遜語が使われるようになったのはそれ以前にまでさかのぼり、8世紀ごろの文献に記されていることがわかっています。

日本の古代社会には現在にはない身分制度があったので、上下関係をきちんとするための一つのスタイルとしてこれらの言葉遣いが生まれたと考えられています。

そして、尊敬語や謙遜語の中でもより古くからあったのは尊敬語で、目下が目上に対して使う表現です。

身分が上の相手のことを持ち上げるために必要なものだったわけです。
しかし、次第に身分制度が細分化されていくに従って、相手を持ち上げるだけでは足りなくなり、もっと強く違いをあらわさなければならなくなっていきます。

このような経緯の中で生まれたのが謙遜語といわれています。これは、身分が上の相手に対して使う言葉で、自分のことをへりくだることによってさらに相手を上に持ち上げることができます。

その後は、それぞれのスタイルが時代に応じて変化していくことになります。
例えば江戸時代には、相手が武士であれば、その身分制度を超えた配慮をしなくてはならなくなりました。

そこで、相手の身分が同じ、または下の場合であっても武士であれば言葉遣いもそれ相応のものを使うことが求められたのです。
また、町人や農民たちにも大きな変化が起こりました。例えば商売をしていれば、身分に限らず相手がお客であるなら自然と言葉の使い方が変わってきたのです。

こうして、自分が属するコミュニティーの中で言葉遣いは発達していくとともに、少しずつ複雑にもなっていったのです。
現在は、江戸時代の町人がそうであったように、ビジネスシーンでの言葉遣いが特に重要になっています。

店員とお客といった関係だけでなく、会社の取引先もそうですし、社内であっても上司と部下という関係性は言葉遣いに十分に配慮しなくてはならないといえます。

また、たとえ相手が同じ人物であったとしてもシーンによって言葉遣いを変えなくてはならない場合もあります。
例えば社内では尊敬語を使わなければならない上司でも、取引先に行った時には同じ言葉を使うわけではありません。

社内では尊敬の気持ちをあらわして「(上司が)おっしゃっています。」というところを、社外では「(上司が)申しておりました。」と言わなければならないのです。

このように、時代とともに立場や考えが多様化し、次第に聞き手に対する配慮という面が重んじられるようになっていくとともに、非常に複雑にもなっていったことは大きな特徴といって良いでしょう。

現在使われているスタイルとしては、古代の身分の上下をあらわすものではなく、特定の人を上位に扱うといった面が重んじられています。

社会生活を営む上で、人間関係を円滑にするために必要なものとして使われているのです。

丁寧語はもちろんのこと、特に尊敬語や謙遜語においては日本でとても長い歴史があるというわけですが、残念ながら現在は衰退しているともいえるようです。
それらの使い方は時として難しいものであり、間違って使われているのを耳にすることも少なくないのではないでしょうか。

確かに、非常に複雑であるがために、常に正しい使い方をするのはたやすいことではありません。

しかし、相手のことを思いやる気持ちを言葉にあらわした大切な言葉遣いなので、正しい使い方と意味を知っておくのはとても有益なことといえます。
そのために歴史や成り立ちを知ることは大いに役立つといって良いでしょう。

特にビジネスシーンでは、敬語を正しく使うことは必ず抑えておきたいマナーの一つに違いありません。

例えば、「今後とも」というのはビジネス用語では現在も広く使われており、手紙やメールで目にする機会は非常に多くあります。

冒頭には「いつも大変お世話になっております。」というあいさつ文を入れるのがスタンダードであり、結びのあいさつには「今後ともどうぞよろしくお願いします。」と入れれば特に問題なく文章を締めることができるのです。

冒頭の文章よりも結びの文章の方が全体の印象への影響力が大きいので、言葉選びは慎重に行いたいものです。
では、この「今後とも」という言葉は正しい敬語なのでしょうか。

「今後とも」の「今後」は、「これから」「この後」「今から」といった意味があり、「とも」には、「同じ」「一緒」といった意味があります。
さらに詳しく見てみると、「今」とは「過去と未来との間にある現在」のことで、「後」とは「これから先の未来」という意味があります。

つまり、「今後とも」というのは「過去や現在と同じようにこれからの未来も」ということであり、「これからもずっと」「この次も同じく」と言い換えることができるでしょう。

「今後とも」には、「これで終わりというわけではなく、この先もずっと関係を築いていきたい」という気持ちが込められていることになります。

大切な取引先であれば、「今回の注文は非常にありがたいものであるのと同時に、これ以降も引き続き弊社の商品を扱ってもらいたい」という願いを込めることができます。

そして、「今後とも」は取引先だけでなく、上司など目上の相手や、目下の相手に対しても使うことができます。

また、「今後とも」は「何卒」と一緒に使うことも多いので覚えておくと良いでしょう。

「何卒」をプラスすることで、「よろしく」という気持ちをより強く伝えることができるので、何かをお願いする際によく一緒に使われます。

「何としても尽力するので是非ともお願いしたい」といったところでしょうか。

「何卒」は、「どうぞよろしくお願いいたします。」の「どうぞ」に代えて使用するようにしましょう。

「どうぞ」を丁寧にした言葉であることから、「何卒」を文章に入れることで全体を引き締めることもできます。

例文

では、実際に「今後とも」を使った例文を挙げてみましょう。

例文(上司あて)

  • いつも大変お世話になっております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

「今後とも」を付け加えることで、毎日そばにいる上司に対して、これからも今と変わらない良好な関係を続けさせてもらいたいという気持ちを込めることができます。

まずは、「いつも大変お世話になっております。」の定番フレーズで日ごろから自分のことを気にかけて親切にしてくれていることに感謝の気持ちをあらわし、それがこの後も変わらず続いていくことを願って「今後とも」と続けるようにしましょう。
また、「いつも」の部分は「平素より」などとすればより丁寧な文章にすることができるので、相手への敬意がとても深いことを表現できます。

日頃の上司との良好な関係を改めて感謝するには最適といえるでしょう。

また、

  • 今後とも何卒末長くお付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします。
  • 今後とも何卒変わらぬご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

などと、前述したように「何卒」をプラスするとさらに強い気持ちを表現することができます。

他にも、

  • 今後ともお付き合いの程、切によろしくお願いいたします。

などと「よろしく」の前に「切に」を付け加えることでも強く願っているというニュアンスを伝えることができます。

また、海外に向けてメールする際にも例文を知っておくと便利です。
しかし、英語のビジネスメールの締めに「今後ともよろしくお願いいたします。」を直訳したものは見られません。

  • Thank you so much for your support.

としても良いのですが、「今後とも」は「continued」と英訳することができます。
そこで、

  • Thank you so much for your continuous support.
  • I appreciate your continued support.

などとするとより「今後も引き続き」という気持ちを込めることができます。

感謝する気持ちを強めたい時には、「appreciate」の前に「highly」などを付けると良いでしょう。

他には、

  • I hope our relationship may long continue.
  • Thank you for your continuous support.

などといった表現でも良いでしょう。

また、

  • I look forward to working with you.
  • I’m looking forward to doing business with you.

という表現も英語ビジネスメールの結びのあいさつでよく見かけます。

ただし、このフレーズは初めて仕事を一緒にした人に対して使うものなので、既に関係が継続されている上司に対しては不自然になってしまうので気を付けましょう。

例文(部下あて)

部下など目下に対しても「今後とも」を使うことが可能で、次のような例文を作成することができます。

  • いつも遅くまで残業してくれてありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

上司に使う時よりも少しだけくだけた言い回しを使うと良いでしょう。遅い時間まで残って働いてくれていることに心から感謝しているニュアンスが、少しカジュアルに伝えられるはずです。

とても爽やかな印象を与えられ、失礼な感じは受けないのではないでしょうか。
このように伝えられた部下は、日ごろの自分の努力を見ていてくれていたんだな、と感じてますますやる気を出してくれるはずです。

しかし、「今後とも」を使うとどうしてもフォーマルな表現になってしまうので、シチュエーションによっては「今後とも」に代えて「これからも」とか「将来的にも」などといったフレーズに言い換えるのもオススメです。

例をあげると、

  • これからもよろしく。
  • 将来的にも今のような感じでいけたらと思っています。

といった感じにすると、「今後とも」では不自然になりそうなところを回避できるでしょう。

また、部下あてに英語でいうとすれば、

  • Let’s keep in touch.

といった表現だとカジュアルな印象になるので、目下の人にはちょうど良いかもしれません。

例文(同僚あて)

同僚に対しても、フォーマルな表現にするよりも少しだけ自然な言い回しができるとよいのではないでしょうか。

  • 今後ともよろしく。

といった言い回しは、何かの仕事で助けてもらって今後もこのような感じで、といったニュアンスを表現したい時に最適です。

これからも良い関係を継続していきたいという雰囲気が出てきます。

しかし、同僚といってもさまざまな関係が考えられるので、「今後ともよろしく。」では少し馴れ馴れしいという間柄の場合は以下の例文がオススメです。

  • 今後ともよろしくお願いします。

また、英語でいうとすれば、部下あての例文と同じく

  • Let’s keep in touch.

などが挙げられるでしょう。

まとめ

「今後とも」は、ビジネスにおいてさまざまな場面で使用できるとても優秀なフレーズなので、きちんと使いこなせると便利なものです。

といっても、場の状況やメールの内容、相手との関係によっては使うのを控えた方が良いこともあります。

例えば、何かトラブルを起こして謝罪するような場合です。
そんな状況で「今後とも」を使えば、トラブルが今後もあることを想定しているようになってしまい、トラブルを軽く考えている印象を与えかねません。

この場合は、「今後はこのようなことがないよう努めていきます。」とか、「重ねてお詫びいたします。」という結びのあいさつを使うようにすると良いでしょう。

それから、どう考えても今後はお付き合いがないとわかっている場合も「今度とも」は不適切です。

「今度ともよろしく」などと言われても、この後は接点がないはずなのだから単に決まり文句で言っている、ということになります。
そうなれば、1回きりのお付き合いがとても素晴らしいものであっても、最後の結びのあいさつによって全体の印象を悪くしてしまうでしょう。

せっかくのそこまでの頑張りが無駄になってしまいます。

使わない方が良い場面があるものの、「今後とも」はビジネスに欠かせないとても便利なフレーズです。
使いこなしていけば、相手とのより良い関係を築いていけるのではないでしょうか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次