本記事では、「ご査収」は正しい敬語か?について解説します。
「ご査収」は正しい敬語?
「内容をよく確認して受け取ってください」という意味の「ご査収」は、ビジネスメールの中でよく使われます。
読み方は「ごさしゅう」で、”ご”は尊敬語の接頭語、査は「調べる」、収は「収める、取り入れる」を表す言葉なので、正しい敬語といえます。
ご査収に似ている単語として「ご検収」がありますが、相手が受け取るものが金銭や書類の場合にご査収を使うのに対して、ご検収は発注して納品された品が注文の通りにあるかどうかを確認してほしい時に使うので、現物をやり取りする仕事の時によく使われます。
ご査収とご検収、それぞれの言葉の意味と使う場面を覚えておきましょう。
「ご査収」を使うときの注意点
「ご査収」を使う時に、注意したいことがいくつかあります。
まずは、添付したファイルのどの部分の内容を確認したらいいのか、相手側にきちんと伝えることです。
「添付ファイルの5ページ目をご査収ください」など、具体的な場所を記載することを忘れないようにしましょう。
そして、添付するファイルのサイズと種類の確認も大切です。
ファイルを開くために必要なソフトを、相手側もインストールしているかどうかわからないので、送信する前に相手に確認するのがベスト。
確認が取れない場合はPDFファイルにするなど、開くためにソフトが不要なファイルに変換してから送信するほうが親切です。
添付するファイルの容量が大きすぎる場合も、相手に負担をかけてしまうので注意しましょう。
商品カタログなど、相手側が必ず見る必要がないものを送る時には「ご査収ください」とは使いません。
そのような時は「お時間のあるときにご確認いただけますと幸いです」や、「ご笑納ください」と言うとよいでしょう。
自分が「ご査収ください」というメールを受けた時は、しっかり目を通した上で「書類を確認いたしましたが、特に問題はございませんでした」と返事をしましょう。
もし内容に不備があったり問題があれば、「少し修正のお願いがあります」と詳細を伝えてください。
相手側のミスだとしても、「お忙しいところ申し訳ありませんが」などの配慮の言葉を添えて、相手を気遣うことも大切です。
「ご査収ください」はメールで書類などを送る時にだけ使い、会話の中で確認したいことを伝える時には、「ご確認ください」と言うのが一般的です。
上司や取引先の人には、「ご確認いただけますでしょうか」と言うとより丁寧な言い方になります。
電話対応や商談の時にもよく使われるのでいざという時にスムーズに言えるようにしておきましょう。
例文
例文(上司あて)
上司に確認してほしい添付ファイル付きのメールを送る時にも、「ご査収ください」という言葉を使うことができます。
その時は「ご査収くださいますようお願い申し上げます」や「ご査収の程お願い致します」など丁寧な言い回しをしたり、「ご査収」の後に「の程」をつけて「ご査収の程よろしくお願い致します」とするとより礼儀正しい印象になります。
例文(日本語、上司あて)
- 本日の会議議事録を添付致しましたので、ご査収の程よろしくお願い致します。
- 企画書を添付致しましたので、ご査収くださいますようお願い申し上げます。
- 訂正しました書類一式をお送りしますので、ご査収くださいますようお願い申し上げます。
例文(英語、上司あて)
ご査収という言葉にぴったり当てはまる英語の表現はないので、「添付したものを見て下さい」という意味の”Please find enclosed~”がよく使われます。
よりフォーマルな言い方にしたい時は、言葉の順番を倒置して”Enclosed please find~”にすると、丁寧な印象になるのでよいでしょう。
「ご要望どおりであればいいのですが」という”I hope you find it satisfactory”を付け加えると、内容を確認してほしいという気持ちを伝えることができます。
(例)Enclosed please find the brochure you requested.(ご依頼のパンフレットを同封いたしましたので、ご査収くださいますようお願い申し上げます)。
形容詞であるattachedを名詞のように使い、”Please see the attached file”と使うこともよくあります。
Please see the attached file(ファイルを添付致しましたので、ご査収の程よろしくお願い致します)
ビジネスシーンでは、上司に書類の確認をお願いするメールを送る機会があっても、「ご査収」とは使わずに「ご確認のほどよろしくお願いいたします」と伝えることのほうが多いかもしれません。
「確認してください」という言葉でも伝わるのですが、命令のようになってしまう上に丁寧さに欠けるので、「ご確認のほどよろしくお願いいたします」とするのがよいでしょう。
ご査収、ご確認以外にも、確認してほしい時に使える言葉がいくつかあります。
参照を丁寧な言い方にした、「ご参照のほどよろしくお願いいたします」は、確認する時に参考資料を照らし合わせてくださいという意味をもっています。
AとBの資料のどちらがいいか上司に判断してもらいたい時には、「ご参照のほど」というフレーズを使うとよいでしょう。
資料や書類などを確認するというよりは、ひととおり目を通してほしいとお願いする時には、「ご一読のほどよろしくお願いいたします」を使います。
「確認してほしい」という意味の言葉の中で、一番丁寧な言い方である「ご高覧のほど何卒よろしくお願いいたします」は、取引先の代表取締役など、ビジネスの上で重要な人物に確認を求める時に使うことがあります。
高覧とは、見るという単語を最大限に丁寧にした言い方です。
そこまで立場が上の相手に、メールを送ったりやり取りをする機会は少ないかもしれませんが、覚えておくといざという時に役立つので頭に入れておきましょう。
書類を確認したというメールが上司から返ってきたら、できるだけ早くお礼のメールを送ることも大切です。
遅くとも、メールを受け取った翌日までには送信しましょう。
お礼の言葉としてよく使われるのは、「~いただき、ありがとうございます」と、「~くださり、ありがとうございます」の2つです。
「ご査収ください」というメールを送って「確認した」という返事をもらったら、「ご確認いただきありがとうございます」とメールの書き出しに書くとよいでしょう。
「~してもらう」の謙譲語である「ご(お)~いただく」は、「確認してもらう」という意味です。
上司に限らず、目上の人や取引先相手にも使えるので覚えておきましょう。
実際対面でお礼を言う場合と違い、感謝の気持ちをメールで表現することはなかなか難しいのですが、
- なるべく早く返信すること、
- 具体的に何に感謝しているのかわかるように伝えること、
- 定型文にならないように具体的なエピソードを入れること、
という3点を守ると、上司から得られる信頼も大きく変わるでしょう。
例文(部下あて)
部下に対しては「ご査収」よりは「ご確認」を使うほうが、丁寧になりすぎないのでおすすめ。
年下の部下であっても「確認しておいて」などの失礼な言葉遣いはせず、「です」「ます」を基本とした丁寧語を使うように心がけると、お互い気持ちよく仕事をすることができます。
(例)企画書を添付いたします。ご査収ください。
”take a look at”を使って、簡単に「見てください」としても失礼にはならないので、覚えておくと便利です。
- I’ve attached the document in this email. I hope that you will be able to take a look at it.(このメールに資料を添付しました。ご査収ください)
- Please find attached invoice.(添付してある請求書をご査収ください)
- Please take a look.(ご査収ください)
書類や資料を確認してほしい時に用いる英語はいろいろありますが、ビジネス英語としてよく使われるのは、”check”と”confirm”です。
この2つの単語をどのように使い分けるかというと、どのくらい重要かということと、どこまでお願いされているかで判断します。
目を通して間違いなどないか確認してほしい場合は、「Could you check the document?」を、
内容を注意深く細かいところまで確認してほしい場合には、「Could you confirm the document?」を使うとよいでしょう。
“check”はスケジュールの確認など、「ぱっと見て確認する」という軽めの意味があります。
一方で“confirm”は、取り決めた内容やそれについての解釈が間違っていないかどうかなど、念を押して確認してほしい時に使います。
ご査収の日本語に近いのは”confirm”ですが、英語には敬語という概念がないので、”check”を使うことで失礼になるということはないでしょう。
ただし少しカジュアルなので、”Please check~”と”Please”をつけるとベスト。
メールに添付したファイルなどを見てほしいという時には、”find”か”refer to~”を用います。
例文(同僚あて)
部下の場合と同じく、普段一緒に仕事をする間柄である同僚へのメールでも「ご査収ください」という言葉を使うのは、少し堅苦しくなりすぎてしまいます。
「確認してください」や「チェックをお願いします」など、内容を確認してほしいという意思が伝われば問題ないので、要件をわかりやすく簡潔に伝えましょう。
(例)明日の会議で使う資料になります。3ページ目の○○と10ページの△△について、特に確認していただきたくご査収願います。
(例)Please see attached drawing.(添付してある図面をご査収ください)
正確にはseeは「ご覧ください」と訳されますが、「見て確認して欲しい」というご査収の意味はこれで伝わります。
書類の確認をお願いしたい、作業を手伝ってほしいなどビジネスシーンで相手にお願い事をする場面は多くあります。
メールを使って英文で相手に依頼する場合、”would you”や“would like you to ○○”を用いることが一般的です。
どちらも言い方としては丁寧なのですが、相手の都合に関係なく「やってほしい」と押し付けているような印象を与えてしまう恐れがあります。
「○○していただけませんか?」と、相手に配慮が伝わる言い回しの”Would you mind if I ask you to ○○?”や、「~していただけると幸いです」という意味の”I would be grateful if you could ○○”を使うと、メールを受け取った相手の印象も良くなるので覚えておきましょう。
お願いをする時にとっさに頭に浮かぶ単語は“please”という人も多いかもしれません。
しかし“please”だけ文章につけることは、相手に指示を出しているように思われる可能性があるので、上司や取引先の相手には使わないように気をつけましょう。
部下や同僚相手には問題ありません。
日本語でビジネスメールを送る時と同じく、英文でも相手への配慮の気持ちを込めることが大切です。
まとめ
敬語の歴史は古く、古代8世紀からすでに使われていたという文献が残っています。
当時の日本には身分制度があり、自分より身分の高い相手に敬意を表す言葉が必要になったため尊敬語が生まれました。
時代の変化によって身分制度がさらに細かいものになり、尊敬語だけでは不都合が起こるようになったので、身分の低い人が自分をへりくだる謙遜語とも言える謙譲語ができました。
最後に、身分の上下に関係なく相手を敬う言葉として丁寧語ができて、現代では場面によって3つの敬語を使い分ける必要ができたので難しくなったのです。
敬語を使う上で一番大切なことは、相手への敬意を示すこと。
どのような人間関係でもそうですが、特にビジネスの場では信頼関係がとても大切になります。
正しい言葉遣いができないと、マナーを知らない人だと判断されて、マイナスな印象を持たれてしまいます。
どのような敬語を使えばいいのかわからないという場面が出てきた時は、すぐに調べる癖をつけて正しい言葉遣いができるようにしましょう。
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