「経験を活かす」は正しい敬語か?(和文・英文例)

「経験を活かす」は正しい敬語か?(和文・英文例)

本記事では、「経験を活かす」は正しい敬語か?について解説します。

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運営者(とみちゃん)

熊本県生まれ。国立高専→国立大学院(情報工学修士)。当時は小さなベンチャー企業2社(現東証プライム市場上場 アカツキ、現JASDAQ市場上場 Speee)、時価総額数兆円規模の大手企業にてエンジニア・インターンシップを経験。Speeeの開発インターンシップ evolution (上級編) にて優勝し、Speee賞を受賞。大学院では、国内最大級のシンポジウムである「情報処理学会 DICOMO2014」にて最優秀プレゼンテーション賞・優秀論文賞を、ワークショップでは「情報処理学会 DPSWS」にて優秀ポスター賞を受賞。その後、大手企業本体の研究所でソフトウェアの研究開発職として従事し、ソフトウェアの上レイヤー~低レイヤーの幅広い開発経験を積み上げる。離婚を経験し、精神的苦痛を和らげるために横浜市から熊本市を電動アシスト付き自転車で走破(1,350km、総日数11日、内雨天時の2日は休憩日)。その後精神面が回復し、現在は子会社の役員室に所属し全社のDXを加速させる仕事に従事しつつ、複数のブログを運営中。

「経験を活かす」は正しい敬語?

小さな成功を積み重ねていく

ビジネスの場面において、しばしば使われる表現の一つに「経験を活かす」という言葉があります。

社内で上司が部下の仕事ぶりやキャリアに対して相談を受けた際に、それまでの部下の経験を考慮しながら、「これまでの経験を活かして、次のプロジェクトに立候補してみては?」とアドバイスを送る事もあるでしょう。

就職活動における学生の自己アピールでは、自分の学生時代の経験を活かし、その企業のビジョンやミッションにいかに貢献できるかを履歴書の上や面接で語られる事でしょう。

同様に転職活動においても、社会人のキャリアを通して培った経験をどのように新天地で活かせるかについて、人事担当に伝わるように工夫される事でしょう。

このように、さまざまなビジネスの場面で使われる「経験を活かす」という言葉ですが、フォーマルな場において相手に失礼にならない表現であると断定できるでしょうか?

「経験」というそのままのニュアンスとして「ご経験」と丁寧な表現にすれば、相手が上司や目上の人であっても問題なく使用できます。

しかし、「活かす」については「生かす」という同音の漢字を用いた言葉も存在しています。

とみちゃん

]多くの人はこの2つの意味に違いがあるのかどうか、あるのならばどういう使い分けが必要なのか、目下の人が上司に使う場合にも謙遜語表現に足り得るのかなど、あやふやな知識ではなく、確実なものとしているでしょうか?

そこで、まずは「活かす」と「生かす」を比較して、それぞれの違いについて明確にし、フォーマルの場でも使う事のできる敬語表現であるかどうかも考察します。

結論から言うと、「経験をいかす」と表現する場合の「活かす」と「生かす」は、どちらを使っても誤りではありません。

辞書で確認しても「生かす(活かす)」と表記されていることもあり、同義語として用いる事が可能であると分かります。

目下の人が上司や目上の人に使う場合でも、「活かす」の語尾や言い回しを丁寧語にすれば、敬語表現としての使用も問題はありません。

あえて使い分けるのであれば、「活かす」と「生かす」の他の言葉との使われ方を知れば、より確実です。

「活かす」と「生かす」の違い

「活」については、主に人が威勢がよく動いているイメージを表現していると捉えられます。

「活」を伴う熟語でも、「活気」であったり、「活発」「活動」など、前向きに進んでいくパワフルな印象のものが多いですね。

また、「活用」という熟語からは、いかにも経験を積んだ人や仕組みが期待通りに目的遂行の役に立っている印象を受けます。

例えば、「海岸に沿った立地を活かして、デザインをよりリゾートらしく寄せていこう」などと言う場合には、明らかに「活かす」の方ですね。

そこで、履歴書に記入するなど文字で表現する場合、そうした元気で活動的なイメージだったり、チームやタスクにとって役立てる有能さを最大限にアピールしたいのであれば、「経験を活かす」という表現にした方がいいかもしれません。

一方、「生かす」の漢字には、正に命を保たせるというエネルギーにあふれた印象を抱かせます。

例えば、「金魚すくいで取ってきた金魚をより長く生かすには、水槽の水をきれいに保ちましょう」など、ダイレクトに命に言及する場合に顕著です。

また、新しい生命が生まれるというように、これからの成長を予感させるニュアンスも含んでいると言えます。

転職という新天地への挑戦という意義はもちろん、特に新入社員として応募する履歴書では、「生かす」という表現の方が、現在の等身大の自分とリンクする度合いが大きいかもしれません。

例文

少し前述したように、「経験を活かす」という表現をビジネスの場で使う実際の場面については、さまざまな状況が想定されます。

いかなる場合でも社会人として、またはこれから社会人になる身として、フォーマルに正しいマナーで使う必要があります。

そこで、ここからは使用する相手との上下関係についてと、想定される場面によって、それぞれがどのような具体的な使用例を考えられるかを挙げていきます。

間違いのない知識として、必要な場面で自信を持って使ってもらえる例文にします。

例文(上司あて)

「経験を活かす」という表現を使う相手が、上司や目上の人の場合について考えましょう。

まずは、すでに使う側が社会人であり、同じ会社の上司の「経験」に対して「経験を活かす」という表現を用いる場合です。

相手側の上司の経験であるため、「ご経験」という丁寧語に直す必要があります。

その上で、さらに「活かす」をどのように使えば最適な表現になるかが大切な部分ですが、「活かす」自体は目上にも目下にも使える表現ですので、語尾を丁寧に言い換えれば大丈夫です。

例えば、他部署に異動する事になった上司に、これまでお世話になったお礼の気持ちをメールや手紙で伝えたい場合、「これまで多くの事を教えていただき、誠にありがとうございました。

これまでの営業部での豊富なご経験を活かされ、マーケティング部でもご活躍される事を信じております。」

などと表現できるでしょう。

例文(上司あて、よりフォーマルな表現)

もっとフォーマルな感じであれば、「これまでご指導ご鞭撻を賜り、心から感謝を申し上げます。

百戦錬磨のご経験を余すことなくご活用される事と存じます。

新天地でのご活躍をお祈り申し上げます。」などと硬い文言にアレンジする事も可能です。

例文(既卒者の履歴書の記載例・面接での口述例)

次に、自分自身が転職を考えている際に、応募先の企業に対して提出する履歴書に記述する場合、または採用プロセスにおけるインタビューにて口述する場合を考えます。

社会人としてのマナーを備えた人物であることは、採用にあたっての最重要項目の一つです。

この場合は自分の経験なので、「ご経験」とは言わずにただ「経験」と表現する事は言うまでもありません。

現在、在籍している企業でどのような経験をしてきたかという自分の歴史を効果的に説明する力も必要です。

その経験が価値のある特殊なものなら、とにかくそこに焦点を当てた説明を行います。

もしそれほど専門性が高くなければ、継続は力なりと言うように、継続した期間が長ければ長いほど先方の人事からの評価も高くなるであろう事を考慮して、説明する内容を準備しましょう。

そして、わざわざインタビューの手間と時間を取ってくれた先方への感謝の気持ちを忘れず、単に「経験を活かしたいと思います」とアピールする自己満足ではなく、自分の経験がどのように具体的に活かせるのかを、先方の企業理念や業務内容としっかりと結び付けて説明しましょう。

例文としては、

「長年にわたって培ってきたIT業界に特化したコンサルティングの経験を活かし、御社のロイヤルカスタマーのために、特にシステム運用管理面のコンサルタント業務で貢献させていただければと存じます。」

という表現が可能でしょう。

経験が豊富な社会人である点をアピールするために、「活かす」と「生かす」の違いについて知っておくべき注意点があります。

官公庁や学校、新聞社など公文書を扱う企業への転職である場合、またはその企業がそうした公務員や出版社に多く顧客を持つ場合などは、あえて「活かす」を避けて「生かす」という表現に絞ったほうがいい場合があることです。

「活かす」が常用漢字ではないため、いわゆる公文書では使用不可である事が理由です。

念のために、履歴書への記載には「生かす」を用いて、そうした公文書には使えない常用漢字の知識も有している事をしっかりアピールすると確実でしょう。

例文(新卒社の履歴書の記載例・面接での口述例)

もう一つのケースとして、学生が就職活動で企業に履歴書を送る場合、またはインタビューで口頭で自分の経験をアピールする例も挙げましょう。

それぞれ意識したいのは、履歴書では一貫した流れの中で適切な漢字と敬語を用いた簡潔な文章を心掛ける事、またインタビューでは正しい姿勢と言葉遣い、適切な表現と一般常識としてのビジネスマナーを心掛ける事です。

前述した「活かす」と「生かす」の違いについて、同じ意味ではあるものの、「生かす」だけが持つ、新しい生命が生まれ育つニュアンスも取り入れて、あえて「生かす」で統一するのもいいかもしれません。

履歴書に書く場合も、インタビューで口述する場合も、語るべき経験に具体性を持たせ、もし入社できたらその企業の理念と業績にどのように貢献できるかを必ずセットにして説明しましょう。

学生時代に経験する事の代表例は、部活動ですね。

運動部でも文科系の部活動でも、自分が何年間も取り組み、努力してきた事を分かりやすく説明し、入社後に自分が実際に働いている姿をイメージしてもらうようにします。

運動部でキャプテンなど、誰が聞いてもイメージしやすい立場だったならなおさらですが、そうでなくても、例えば吹奏楽部で副部長でしたという経験でも、その企業の募集要項や社風から望まれている人物像に当てはまる部分とリンクさせてアピールポイントを作りましょう。

例えば、「中学・高校の6年間を吹奏楽部で活動し、高校3年生では副部長を努めておりました。チームを引っ張る部長を支え、悩みがあっても話せずにいる部員に目を配るよう心がけました。組織の二番手として上にも下にも気を配り、チームの和を保ってきた経験を生かし、良好なチームワークを維持するための大切なメンバーとして御社のプロジェクトに貢献したく存じます。」などと表現できるでしょう。

もう一つ例を挙げれば、ボランティアもやはり多くの学生が経験する事の一つでしょう。

「学生時代に、自然災害に被災した地域にがれき撤去のボランティアに行きました。現場では実際に本当に困っている方々が大勢いらっしゃったので、ボランティアという人的リソースをどういったプライオリティに従って配置すべきかという、現場のマネージメントの大切さを学びました。

この時の経験を生かし、常にプライオリティとリソースを意識したプロジェクトマネージャを目指し、御社のプロジェクトが費用対効果の高いものであり続けられるよう、微力ながら貢献したいと存じます。」

このように、自分の経験を具体的な将来のビジネスマン像に繋げられる説明で、企業側に欲しいと思ってもらえるようにしましょう。

最後に、この表現を英語のフレーズで言う場合も考慮しておきます。

これには定型の表現があるので、それほど迷わずに済むでしょう。

“make use of one’s experience.(経験を活かす)”を用いれば問題はありません。

念のため、一例を示すと次のようになります。

“I will make use of my experience as an IT consultant for the next project of yours.(御社の次のプロジェクトに私のITコンサルタントとしての経験を活かしていきたいと思います)”

例文(部下あて)

自分が上司の立場で、部下や目下の人に声をかける場合について、例えば部下が異動や転職をするケースが想定できます。

このケースでは、表現に気を付けるというよりも、その部下の門出を励ましてあげられるよう、気持ちがこもっているかどうかに気を付けたいところです。

一例を挙げれば、

「この度の栄転、おめでとうございます。誠意にあふれ、お客様の立場で考え抜くあなたの経験を次の職場でも活かせれば、かならず成功するでしょう。新天地での活躍を期待しています。」

などと声をかけてあげられるでしょう。

例文(同僚あて)

同僚に向けて「経験を活かす」という表現を用いる場合についても、やはり部下や目下の人への時と同様、異動や転職の機会があり得ます。

表現にしばられるというよりは、同期や同僚としての気持ちがストレートに伝わる表現が最も適切だと思われます。

もちろん、社会人としての敬意と節度を忘れず、あまりくだけ過ぎないようにするという事が同期ならではの注意点になるかもしれません。

「この度のご転職、心からお喜び申し上げます。君の事だからどこへ行っても心配ないとは思いますが、これまで学生時代も社会人になってからも頑張って勉強してきた語学の経験を活かし、外資系企業での新たなご活躍を祈っています。」

というような文言が一例となるでしょう。

まとめ

「経験を活かす」という言葉が、ビジネス上の転機となる場面においては頻出の表現である事が改めて認識されたと思われます。

上司や目上の人への適切な表現に気を遣うことはもちろん、いかに気持ちを込められるかによって、伝わる度合いに影響が出るものです。

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