本記事では、「ご相談」は正しい敬語か?について解説します。
「ご相談」は正しい敬語?
「相談したい」とは、仕事の他、身の回りのさまざまなことについて話しを聞いてもらい、相談した相手から何らかのアドバイスが欲しい時に使うフレーズでしょう。
相談するとなれば相手にはそれなりにまとまった時間を作ってもらう必要がありますし、その内容は込み入ったものが多いことから、プライバシーが確保されていて落ち着いて話せる場所を用意するのが一般的です。
また、自分のことについてなので、「相談したい」は相手にお願いをしているというニュアンスが含まれており、相手から何かしらかのアクションを期待していることになります。これらのことを考えると、「相談したい」のフレーズは丁寧に表現することが必要といえるでしょう。
信頼できる相手にお願いをして、自分が困っていることを解消できるよう、しっかりとした言葉遣いをするのがオススメです。
また、特に仕事上の相談事は、上司など目上の方や大切な取引先の担当者などに話すケースが多いと考えられます。
ビジネスシーンにおいて、「ご相談があるのですが、」と持ち掛けることは少なくないことでしょう。
しかし、改めて考えると、「ご相談」という言葉はきちんとした敬語といえるのでしょうか。
結論からすると、自分の困りごとを相手に相談に乗ってもらうシチュエーションとして「ご相談」と使うのは正しいといえます。
なぜなら、「相談」するのは自分ですが、その行為が相手にまで及ぶからです。
使い方で似ているものを挙げれば、「ご報告」などがあります。
いずれも頭に付けた「ご」というのは謙譲の接頭辞なので、「ご相談」「ご報告」とするだけで相手に敬意を払っていることになります。
相談したい旨をもっともシンプルに言うとすれば「ご相談させてください。」となるでしょう。
しかし、同じ「ご相談」でも「ご相談に乗ってください。」ということはありませんので気を付けましょう。
この言い方では、言われた相手は見下されていると感じて気を悪くする可能性があります。
一方、自分が「相談」される側に立つ場合もよくあります。
この場合も「ご相談」と使うことがあります。
「何かあればお気軽にご相談いただければと思います。」というのはよく聞くフレーズなのではないでしょうか。
もっと相手に敬意をあらわしたい時には「ご相談いただければと存じます。」などということもできるでしょう。
他にも、「ご相談いただけましたら幸いです。」ということができます。
先ほど「ご」は謙譲の接頭辞と述べましたが、この場合の「ご」は相談しようとしている相手に敬意を示す「尊敬」の接頭辞となるので、使用して問題ありません。
また、「ご相談に乗らせていただきます。」ということもできます。
「ご相談ください」の類似表現としては、
「ご助言いただけませんでしょうか。」
「お知恵を拝借いただければ幸いです。」
などが挙げられます。
先方から相談される場合の類似表現としては、
「お申し付けください。」などが挙げられるでしょう。
- 「応相談」
- 「要相談」
- 「別途相談」
などというのはアルバイトの募集要項でよく見かけますが、いずれも同じような意味で使われています。
といっても、細かくいえば「応相談」と「要相談」では少々意味が違います。
まず、「応相談」は「相談に応じる」ということなので、「相談してくれるとできるだけ応じたいと考えている」というニュアンスになります。
一方の「要相談」は「相談する必要がある」ということなので、「提示した条件以外を希望している場合などはあらかじめ相談してもらう必要がある」というニュアンスになります。
また、「ご相談」を英語で表現する際には、「相談」を直訳した「consultation」を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、「consultation」はどちらかといえば専門的な相談をする際に使う言葉です。
そのため、自分の身近な相談事をするのにはあまり適しているとはいえないでしょう。
それよりも、「ask for one’s advice」といったフレーズを使うと良いのではないでしょうか。
また、「have a long talk」もよく使われるフレーズで、込み入った相談事で時間が長くかかりそうな時には特にふさわしいといえそうです。
他には、「尋ねる」という「inquire」を使うこともできます。
アメリカなどでは特に日本のように厳しい上下関係は見られないようです。
そのため、言葉遣いにもそのような表現が少ないといえそうです。
しかし、日本においては古代から上下関係が非常に重んじられてきており、歴史を振り返ってみると敬語がとても重要な役割を担ってきているのがわかります。
このような言葉遣いをすることで、自分と相手、また、周囲の人々との関係について自分がどう考えているかを表現していたのです。
例えば「〇〇さんがこのようにおっしゃいました。」と言ったとしましょう。
これは〇〇さんに尊敬語を使っているわけですが、すると、自分は〇〇さんのことを立てているということになります。
そして、それと同時に自分が〇〇さんを立てるべき立場にあると捉えているという意味も含まれていることになります。
つまり、ある言葉遣いをすると、言った本人が意図するかしないかに関わらず、そのような人間関係が表現されるということになります。
そして、注意しなければならないのは、もしもその言葉遣いをしなかった場合には別の人間関係が表現されるということです。
非常に奥深いことから、慎重に言葉を選ぶ必要があるということでもあります。
しかし、時代が変わっていくにつれてその役割にも少しずつ変化があり、現代などは上下関係の重要性という点ではやや薄れてきているといっても良いでしょう。
どちらかというと、話している相手やその人の立場を尊重しようという気持ちを表しているといえます。
また、自分とその人が親しいかそうでもないか、といったことを示しているという側面もあります。
古い時代では重んじられていた上下関係も、現代では「人は皆平等」という意識が基本にあるので、必要以上に自分を卑下したりする必要はありません。
同時に、相手に自分を尊大に扱わせなくてはならない、といった必要性もないので、お互いに尊重し合うという気持ちを大切に言葉選びをしたいものです。
例文
では、上司、部下、同僚それぞれに向けた「ご相談」を使った例文を挙げていくので参考にしてみてください。
例文(上司あて)
目上となる上司に何か相談事をするのなら、
- 折り入ってご相談があるのですが、お時間取っていただけますか?
- ご相談させてください。
- ご相談がございます。
- ご相談に上がりたいのですが、よろしいでしょうか。
- ご相談申し上げたいことがあるのですが、少々よろしいでしょうか。
- ご相談させていただきたく存じます。
などの例文が考えられます。
「ご相談がある」については既に述べているとおり敬語ということで間違いありません。
しかし、「ある」と言ってしまうのに違和感を覚える方は少なくないのではないでしょうか。
これは「ある」という言葉に相手に対する敬意がまったく払われていないからと考えられます。
「相談」には「お」を付けているので少しバランスが悪く聞こえてしまうわけです。
このような時には、「ご相談に上がりたい」とか「ご相談申し上げたい」といったフレーズを使ってみると良いでしょう。
いずれも、「相談」するという自分の行為をへりくだっているので謙遜語を使っていることになります。
「ご相談があるのです」「ご相談があります」などは、敬語の一つである丁寧語に分類されるのでこれでも十分なのですが、相手によっては謙遜語を用いた方がふさわしい場合もあるでしょう。
ただし、最後の「ご相談させていただきたく存じます。」については、既に相談があることを伝えていて許可を得ている時に使うのが適切です。
そうでない場合には強制しているように受け取られてしまうので、他の例文を使うようにしましょう。
また、「ご相談~」の前には、「申し訳ございませんが、」とか「恐れ入りますが、」といったクッション言葉をプラスするのがオススメです。
前述したように相談する時間を相手に取ってもらわなければならないので、相手に負担がかかることを申し訳なく思っているというニュアンスを伝えることができるでしょう。
「お忙しいところ大変恐縮ですが、」などということもできます。
そして、実際に相談に乗ってもらった後でお礼を言いたい時には、
- ご相談に乗っていただきありがとうございました。
- ご相談に応じていただきありがとうございました。
などということができます。
前述したように「ご相談に乗ってください。」ということはありませんが、お礼を述べる際には上記のようにいうことができます。
少々紛らわしいのですが、上記の2つの例には「いただき」という謙遜語が使われているという違いがあります。気を付けて使うようにしましょう。
逆に相談を受ける時については、上司というよりもサービス業のお客様をイメージするとわかりやすいでしょう。この場合なら、
- ご相談いただければと思います。
などと使うのが一般的です。
また、英語の例文は、前述したとおり、専門的な相談事をするのなら、
- I would like to have a consultation with you about the project.
といった表現が挙げられます。訳すると「その仕事についてご相談したいことがございます。」といったところです。また、
- I would like to discuss with you on what to take next.
と「discuss」を使っても良いでしょう。訳すると「次にすることをご相談したいのですが。」といったところでしょうか。
例文(部下あて)
部下に対して使う際には、自分が相談される立場であるシチュエーションが考えられます。
目下の人に対して尊重しすぎると不自然に聞こえるので、以下のような例が挙げられます。
- 何かあったら相談してください。
- ご相談ください。
「ください」というのは、「くれ」を丁寧に言った言葉です。
そのため、相手を敬っていることにはなりますが、やや命令口調ということもできるので注意して使うようにしましょう。
上から目線と受け取られることも考えられるので、相手やシチュエーションによっては適切ではなくなってしまいます。
また、場合によっては部下に相談したいことが出てくることもあるでしょう。その場合は、
- ご相談があります。
- 相談したいことがあります。
- ご相談したいことがあります。
などとすると不自然ではないのではないでしょうか。
目下の人に対してあまりにも自分をへりくだっては相手も恐縮してしまうというものですが、相談の内容によっては部下に十分な敬意を払う必要も出てくるでしょう。
英語での例は、
- I’d like to inquire it with you.
- I’d like to ask for your advice.
- I’d like to have a long talk.
などが挙げられます。1つ目の例を訳すると、あなたにその仕事にについて尋ねてもよろしいですか?となります。
例文(同僚あて)
同僚に対しても、部下と同じく以下のように言うことができるでしょう。
- ご相談があります。
- 相談したいことがあります。
- ご相談したいことがあります。
英語での例も部下あてとほとんど同じく、
- I’d like to inquire it with you.
- I’d like to ask for your advice.
- I’d like to have a long talk.
といった文章が挙げられます。
まとめ
「ご相談」という言葉はビジネスシーンにおいては非常に良く使われるもので、それ自体は相手に十分な敬意を払っている言い方です。
ビジネス上は、前もって周囲に相談しておけば、大きく反対されることなく決定に持ち込むことができるというものだからでしょう。
しかし、「ご相談」は尊敬と謙遜という2つの意味を持っているので、後にくる言葉は慎重に選ばなくてはいけません。
自分が相談に乗ってもらいたい場合は目上の人が対象となることがほとんどなので、まずは、もっともシンプルな「ご相談させてください。」のフレーズを暗記しておくと良いでしょう。
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